たんすい日記

2019.06.01

それが最後

今日は園だより「はばたき」より園長だよりをお届けします

それが最後

先日、母の日に中学生の上の娘から、
カーネーションの花束をもらいました。
自分一人で花屋さんに買いに行ったそうです。
去年までは、父親と一緒に準備したカーネーションも今年は一人で。
メッセージカードも添えて・・・。
娘にまたひとつ、一人でできることが増えました。

育児には、いつも初めてできるようになったことと最後のことが、
幾重もの波のように押し寄せてきます。
何かが自分一人でできるようになって、
誰かからの手助けを必要としなくなる。

それを、”成長”といいます。
私たちのアルバムには、そんな成長の瞬間ばかりが綴られていきます。

でも、その裏には、私たちが気が付かずに終わっていく、
たくさんの”最後のこと”があります。

「おかあさんがいい」泣きながらいった幼稚園。
我が子があなたを求めて泣く最後の時。

いつものようにお風呂で体を洗ってあげる、それは、今日が最後かもしれません。

おっぱいがなくて眠れるようになった。
あなたが母乳をあげるのもあの日が最後。

「自分で食べられるよ」 
あなたが食事をスプーンで運ぶ、最後の時だったかもしれません。

「重いなぁ」と思いながらベビーカーを押したあのとき。
それは最後にベビーカーを押したとき。

眠っているあなたのベッドに入ってくる子ども。
そんな風に起こされるのはそれが最後。

「またそんなに散らかして」
怒りながら散らかしたおもちゃをかたづけるのも、あのときが最後。

ベッドでいつものお気に入りの子守歌を歌ってあげる。
その子守歌を歌うのはそれが最後。

「お母さん大好き」 両手を広げて抱きついてくるのもこれが最後。

愛おしくて、いくら切望しても、もう戻ってこない最後の時です。

毎日の生活と育児が、あまりに慌ただしくて、
自分の時間が無くなった私たちは、早く大きくなればいいのに、
何でも一人でできるようになればいいのに、
早く自分の時間がほしい、早く・・・。
そう思ってしまいます。

でも、あとからよみがえる思い出には、そんな愛おしい一瞬一瞬が、
宝石のようにちりばめられた時が綴られているのです。

子育ての時は必死。
一生懸命だからこそ、充実した、
一瞬一瞬を大切にしたい、かけがえのない時間です。

淡水幼稚園 園長 豊田彩子

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